やっと担任から解放された俺は、急いで一年生の教室が並ぶ棟へと移動する。

マサトのクラスを目指して廊下を歩いていると、どこからか聞こえてきた話し声にピタリと足を止めた。




「こんなもんかな?」

「も…もう充分です」




引き寄せられるように声が聞こえてくる教室を覗いてみる。

見えたのは椅子に座るマサトと、マサトのブレザーを濡れたタオルで必死に拭いている朱里の姿。

そんな朱里を、マサトはやっぱり赤い顔で見ていて…


朱里はいつものように無意識なんだろうけど、マサトとの距離はかなり近い。

マサトと向かい合う形で立っている朱里は、ブレザーの肩や腕部分を拭いているから自然と髪の毛がマサトの顔に触れていて。


朱里の髪はいつもシャンプーの良い香りに包まれてて、サラサラで…すごく綺麗なんだ。

きっと、マサトもそれに気付いたんだと思う。

まるで引き込まれるように朱里の髪に手を伸ばしては、グッと握りしめて。

そんなことを何度か繰り返している内に、朱里がパッと顔を上げるとマサトはハッとしたような顔をしながら伸ばしていた手を勢いよくおろした。