◆◇◆拓海side◇◆◇
「あー、何か言うことあった気がするけど忘れたからいいや。今日はもう終わり!気を付けて帰れよ~。腹出して寝るなよ~。んじゃ解散~」
こんな感じで今日もいつも通り緩いHRが終わる。
この担任は相変わらず適当すぎるけど、その分早く帰れるからいっか。
今日は朱里と家デートする約束だし…楽しみすぎる。
浮かれ気分で帰り支度を始める俺とは違い、隣にいる朱里はなんだか落ち着かない様子。
そんなにそわそわしてデートが待ちきれないのかな?なんて一瞬思ったけど、とてもそんな雰囲気ではない緊迫した表情を浮かべていた。
「朱里、どうしたの?」
「たっくん…ちょっと待ってて!」
「え?どこ行くの?」
「マサトくんのとこ!」
「マサト?何しに…」
って、全部聞く前にもう行っちゃってるし。
普段呑気な朱里にしては珍しく俊敏な動きなのが気になるところ。
さては…マサトと何かあったな?
こういうときは、周りに探りを入れるべし。
ユメちゃんは…まだ帰ってないしセーフ。