◇◆◇拓海side◆◇◆
桜の花びらがハラハラと舞う季節。
綺麗に咲き誇っている桜より、舞って地面に散った桜のほうが昔から好き。
「たっくん、たっくん。ほーら、花吹雪~」
「それ毎年やってるよね」
「だって綺麗なんだもん」
通学途中の桜並木。
朱里は何度も足を止めて地面に散った桜を一生懸命集めては、背伸びして俺にパラパラ散らしてくる。
これだから散った桜の方が好きなんだ。
背伸びなんかしたってちっちゃい朱里は俺に到底届かないのに…可愛すぎて死ねる。
多分俺の頭に散らしたいんだろう。
ピョンピョン跳び跳ねる朱里を見て目線を合わせるように屈んであげると、やっぱり満足そうに俺の頭に桜を散らし始めた。
「やっぱり春はこれしないとねっ」
気が済んだのか笑いながらスキップしちゃうこの子は妖精なのかな。
ああ、今日も抜群に可愛い。
朱里がこんなに可愛いから…この時期は憂鬱になる。