「あー、明日バレンタインじゃん。直接渡されたなら断れるけど机とか靴箱に入れられたのは持って帰るしかないよね」
「くっそ、相変わらずモテてんなぁ」
「全然嬉しくないけどね。俺は朱里のだけでいいし」
本当、こんなのただのお荷物で大迷惑。
朱里に余計な心配させたくないのに…
帰ったら父さんにでもあげとこ。
「おお、そういや明日バレンタインか。まさか朱里ちゃん俺らに友チョコくれたりして」
「朱里ちゃんならくれそー。俺らに手料理食わしてくれるくらいだからな」
こんな二人の会話に、俺はピクリと反応する。
友チョコなんて厄介なもの、一体誰が考えたの?
朱里がバレンタインにチョコをあげるのは、昔からオジさんと俺と俺の父さんだけ。
というか俺が子供の頃そう仕込んだんだよね。
『朱里知ってた?バレンタインって家族にチョコをあげる日なんだよ』
『へぇ、そうなんだ。たっくん物知りだね!』
うん、たしかこんな感じだったはず。
さすがに小学校高学年くらいになった時には、周りの雰囲気で家族だけじゃなく好きな人にもあげるものなんだって気付いてしまったみたいだけど…
俺の知る限り、朱里は今まで好きな奴なんていなかったからセーフ。