「んー、でもぉ…朱里さんは知らない方がよかったかもぉ」
「なんでなんで?私も今年から友チョコあげたい!」
「そぉですかぁ?なーんかマズイ予感がするんですけどぉ…凜知~らない」
マズイ予感…?
去年のバレンタイン以来、何度かお菓子を作る練習したからマズくはないと思うんだけど。
去年のバレンタインは、お母さんと一緒に作ったクッキーをたっくんにあげたんだ。
私一人で作ったわけじゃないのに、すっごく喜んでくれて暫く食べずに机に飾ってたっけ。
それで、食べるときも勿体ないって何度も言いながらちょっとずつ食べたりして。
『こんなに美味しいクッキー食べたの生まれて初めて』
『そんな、大袈裟だよ…』
『本当だよ。朱里が一生懸命作ったものはなんでも美味しいんだから』
ふと、思い出した一年前のこんなやり取りにクスッと笑みが溢れる。
市販のチョコは色とりどり、種類も豊富ですごく惹かれるけれど…今年はやっぱり手作りしたい。
去年たっくんの喜ぶ姿を見てからというもの、私は密かにお菓子作りの練習を重ねてきた。
だから…マズくはないはず。
たっくんは昔から私があげたものや作ったもの、すっごく大事にしてくれる人だから、どんなものをあげたって大袈裟なくらいに喜んでくれるだろうな。
今年は私が作ったもの躊躇わずに食べれるように、形に残るものを一緒に渡してみるのもいいかも。