「早くおいで。ケーキに蝋が落ちちゃうよ?」
「あ…うん」
理解はできないけれど蝋が落ちたら大変だし、と、とりあえず指定された場所に座ることにした。
重くないかな…?なんて、余計なことを考えてる間にも蝋はどんどん垂れていく。
「朱里、早くフーッして。できる?」
「できるに決まってるでしょ?私17歳なんだよ?」
「そう?子供の頃は火怖いー消せないーって泣いて俺と二人で消してたのにね」
懐かしい…そんなこともあったな。
思い出の中の私は、火が怖くてたっくんに寄り添いながらシクシク泣いて。
たっくんはそんな私を見てクスクス笑いながら『一緒にフーッてしよ』って言ってくれたんだ。
遠い日の記憶が蘇れば、不思議とあの頃と同じ気持ちに戻って。
「もう火は怖くないけど久しぶりに二人で消したいかも…」
「俺もそう思ってたとこ。じゃあ一緒に消そ」
「うんっ」
まるで子供の頃に戻ったみたいに二人同時に息を吹き掛けると、17本のロウソク達に灯る火は見る間に消えていく。
そして最後の一本が消えたとき…
後ろから降ってきた、たっくんの声。
「誕生日おめでとう。大好き…」
今日だけで何度その言葉を言われたのか分からないけれど、それでも一回一回ドキドキして嬉しくて…
ケーキより甘いその声に、溶けそうになる。