思い返せば私は子供の頃から緊張するたびに頭が真っ白になって何も考えられなくなっていた。
それで大体いつも失敗して泣いてたっけ。
例えば運動会のかけっこのとき。
ドジな私は転けるのが怖くてすっごく緊張して。
そんな私の緊張をいつも解してくれたのは、たっくんだった。
『他のこと考えずに俺のことだけ見てたら絶対大丈夫』
ギュッと手を握り、そう言ってくれたたっくんは毎年かけっこの時ゴール地点で私を見守ってくれた。
私は何も考えずに、たっくんを目指してとにかく走って…そうして失敗を恐れずにやってこれたんだ。
「大丈夫だから…俺のことだけ見てて」
「…っ、」
「隠さないで。恥ずかしがる顔も、声も…全部見たいし聞きたいから」
そして、今この瞬間も…
たっくんは私の手を握り、緊張を解してくれる。
あの頃から変わらない、その温かい手と優しい声。
それがなんだか嬉しくて…幸せの涙が溢れた。