私は彼のことを“たっくん”と呼んでいる。
赤ちゃんの頃からお隣さんだから特に変なことではない。ないのだけど…
「朱里、答えないとハグの刑だよ。そっち行こうか?」
「ハ…!?待っ、答えるからっ!ユメちゃんと駅前にオープンしたカフェでパンケーキ食べてた!」
「ユメちゃんか。中学一緒だったし信用できる子だよね。それならいいけど…門限は守らないと」
「たっくんは心配症すぎるよ。私、もう高校生なんだから平気だってば」
「ダーメ。次門限破ったら…キスしちゃうよ?」
「キッ…!?」
「ハハ、顔、真っ赤。じゃ、また明日ね」
先に窓を閉めたたっくんにつられるように窓を閉めた途端、膝から崩れ落ちた。
いつもニコニコ、キラキラ笑顔のたっくんがハグするだのキスするだの…
最近増えたそんな発言に、ただただ戸惑うばかり。
日に日に大人びていく彼を“たっくん”なんて可愛く呼んでも良いものか…
そして、ただの幼馴染みにこんなにドキドキしても良いものか…
自分の両頬に手を当ててみるとすごく熱くて、たっくんに指摘された通り真っ赤になってるんだと分かった。