窓を開けると、いつものように向かいの窓は既に開いていて、たっくんはいつも通り窓際で頬杖を付きながら笑っていた。

それなのに、私を見た瞬間その笑顔が何故だか険しいものへと変わる。

どうしたのかな、なんて首を傾げている間に向かいの窓からたっくんの姿は消えてしまった。



「…?」



たっくんの表情と行動の意味が全く理解できない私はその場に立ち尽くす事しかできない。




「朱里」



と、バタバタ音がしたかと思えばさっきまで向かいにいたはずのたっくんが急に私の部屋に飛び込んできたものだから驚いて大きく目を見開いた。



「たっくんどうしたの?」

「朱里…今日はどこで誰となにしてたの?」

「え?」

「早く答えてよ」



聞かれていることはいつもと同じなのに、今日のたっくんはいつもみたいに笑ってない。

それが何故だか分からなくて、少し戸惑ってしまった。



「あのね、今日は凜ちゃんと遊んでたんだけど…」




戸惑いながらも、今日一日の出来事を事細かく報告したって、やっぱりたっくんは笑わない。

なんで…?



「へぇ…じゃあ、諒介さんの家行ったんだ?」

「うん。子供達におやつ食べさせるためにね」

「ふーん…」



気のない返事をするたっくんは無表情を貫いたままだ。

その理由が分からなくて必死に考えていると、たっくんは無言のまま私の腕を掴んで自分の方に引き寄せる。

そのまま私の首筋を嗅ぐように鼻を近付けられると、もう訳が分からなくてますます混乱した。