「なんかすごい音聞こえてきたけど。佐伯って甘いもの好き?」
そう声を掛けてきたのは、同じクラスの男子だった。
この人はたしか…
進級初日なのにクラスの雰囲気を明るくしてたムードメーカー的な人だったはず。
「あ…やっぱり聞こえちゃったよね。うん、甘いもの好きだよ」
「じゃあこれあげる。放課後って小腹空くからいつも持ってるんだよね」
そう言って机の上にバラバラッと置かれたのは、複数の一口チョコレートだった。
「わ、チョコだ。ありがとう、えっと…早、早…」
「早川ね。早川 健人。覚えた?」
「早川くん…ごめんね?私いつも人の名前覚えるの時間掛かっちゃうの」
「ううん、気にしなくていいよ。ほら、お腹派手に鳴らしてたんだからチョコ食べて紛らわせないと」
「うん。いただきまーす」