それでも朱里と離れていたあの二年間だけは、朱里貯金をしなかった。

そんな俺に父さんも母さんも何も聞いてこない。

家に色んな女の子を連れ込んでたって何も言わない。

きっとこの頃、俺が悩み苦しんでいたことを分かっていたんだろう。

それを証明するように、その二年間だけはうちでも朱里の話題は全く出なかったし、親同士で出掛けることはあっても家族ぐるみで出掛けることはなかった。




そして中三の誕生日。

この頃の俺は、再び朱里を追い掛けていた。

プレゼントで貰った現金を『朱里貯金しといて』と、頼んだ俺に母さんは言った。



「良かった。もうフラフラすんじゃないわよ」



そして、この年からまた家族ぐるみの交流が再開したんだ。

親って本当すごいって思った。



母さんの言った通り、この頃にはちょっとした指輪くらいなら買えそうな程、貯金は貯まっていた。


だけど指輪を買う前に朱里に好きになってもらわないと…


それがなによりの課題だった。