「そのようなことを、口に出すわけには……」

「……言ってくれないのなら、帰らないわ」

ふっとリュートがため息を吐いて、

「……お嬢様、愛しております。私のマスターとして、いつまでも……」

言ったその場しのぎな言葉に、握る力が萎えた隙をつくように、

手がすっと離され、扉が眼前で閉められる。

「違う…そんな言葉が、聞きたいんじゃない……わかっているんでしょう?」

閉められた扉越しに、彼の気配はするのに何も返ってはこなくて、

「……言って、リュート。呼んで、私の名前を……。そうして、愛してると……」

彼と私を遮る扉に、片手をあてる。

と……僅かな沈黙の後で、

「……愛して…います……ジュリア様……」

途切れ途切れに彼の声が聞こえて、涙がこぼれた。