「……リュート」

帰りたくはなくて、言いつのるのに、

「……お帰りを…お嬢様」

椅子を先に立ち上がり、私の座る椅子の背に両手をかけて、後ろへ引こうとする。

そうするしかない思いで立って、背後の彼を振り返る。

無言で見つめる私の背中を押し出すようにもして、扉へといざなうと、

「……お帰りください」

絞り出すようにもくり返して、

「……もう、ここにいてはいけません。そして、二度とここにいらしてもなりません……」

そう、リュートは続けた。