「……そんなことをすれば、侯爵様を裏切ることにもなります。そのような行為を、あなたにさせるわけには……」

言葉を詰まらせる彼に、

「……キースが酷い人だったんだということが改めてわかった今だから、言ってるのよ……それに、もう会えないかもしれないのに、リュートはそれでも……」

込み上げる思いを打ち明けると、

「……それでも、いい…などとは……」

リュートは言い淀んで、眉間に僅かにしわを寄せて苦悶の表情を浮かべた。

「……ですが、私には、あなたをここへ泊まらせるわけには……」

額に手をあてて表情を曇らせる彼を見つめて、

「……あなただって、本当は帰したくないと思ってくれているのでしょう?」

と、問いかけた。