「……だけど、他の家で執事につくことだってできたんじゃないの?」

「…いいえ」と、リュートが首を横に振る。

「……マスターから解雇された執事など、体裁が悪くてどなたも雇うことなどは御座いません」

話して、

「それに、お嬢様も聞いていられると思いますが、私が主人を誘惑していたという噂は、上流階級に広く流布しておりますから……」

「……まさか、その噂を流したのまでがキース自身だって……」

今になって、その策略の深さを思い知らされるのに、

「……私には、多くを語ることはできません……けれど、私には執事として働く場がもうないことは明らかなのです」

沈んだ声でそう話すリュートに、「そんな……」と、口をつぐんだ。