「着いた...」

私たちが陸へたどり着いた頃には空はオレンジ色になっていた。

「本当に陸に着いちゃうなんて...」

ケルピーはとても驚いている。

私もここにたどり着けたことには驚きだ。

けれど初めてきたような気がしない。

なんだか懐かしい。

なぜだろう...

と私が考え込んでいると

「マリナ、崖の上に人がいる」

とケルピーは崖を見上げながら言った。

「ほんとに?」

私はケルピーの言った通り崖の上を見た。

するとそこには悲しそうな目で海を見つめている1人の男がいた。

初めてこんな近くで人間を見た。

なぜかその男から目を離すことができない。

なんで...?

知っている気がする。

この場所も...

彼のことも...

「海斗!」

と突然彼を呼ぶ女の人の声がした。

海斗...

彼は振り返ると

「今行く」

そう言って声のした方に歩いて行ってしまった。

その時一瞬彼がこちらを見たように見えた。

まさか、見られてなんかないよね...

と崖の上を見ていると

「マリナ!」

突然ケルピーが大きな声で私の名前を呼んだ。

「な、なに?」

あわててケルピーの方を見る。

「マリナ!今日って...」

今日...?

「あ!」

完全に忘れていた。

今日の夜に宮殿で大きな舞踏会が行われるんだった!

大変!

「行くわよ、ケルピー!」

「ま、まってー!」

そう言って私たちは大急ぎでお城へ向かった。