目がさめるとそこは知らない場所だった。

水の中でもない。

浜辺の砂の上でもない。

なんだか不思議な感覚。

ゆっくりと起き上がり周りを見渡してみる。

辺りには見たことのないようなものがたくさん並んでいた。

ここって...

これは洞窟にもあった気が...

そう手を伸ばした時だった。

ガチャッ

と扉の開く音がした。

「目が覚めた？」

と声のした方を見ると1人の女の人が立っていた。

人間...

怖くはないとわかっている。

けれど始めて会う人間だ。

「恐がらないで。私は水城汐梨。汐梨って呼んでくれて構わないわ」

と女の人は優しい声で言った。

汐梨さん、か...

「それであなたは？」

と汐梨さんは私に尋ねた。

「マリナです」そうこたえたつもりだった。

けれど声が出ない。

どうしよう...

と私が困っていると

「マリナ...」

と男の人の声がした。

えっ

「海斗、この子のこと知ってたの？」

と汐梨さんは少し驚いたように振り返った。

するとそこには私の愛しい人が立っていた。

「いや、そう言ったように見えた」

と彼は言った。

「そうなの？」

と言う汐梨さんの言葉に私は頷いた。

「すごいじゃない海斗！」

と汐梨さんは彼の肩を叩いた。

「いっ」

「あ、忘れてたわ。この子は海斗」

と汐梨さんは彼を指差した。

「自分で自己紹介ぐらいしなさいよ」

と汐梨さんは小さな声で彼に言った。

彼はめんどくさそうな顔をすると

「水城海斗です」

と呟くような小さな声で言った。

「他にも言うことあるでしょ」

と汐梨さんはまた小さな声で彼に言った。

しかし彼は逃げるかのように

「じゃあ俺、学校行くから」

と言って出て行ってしまった。

「ちょっと海斗！」

と汐梨さんが止めようとしたが彼は「行ってきます」と言って出かけて行ってしまった。

「はぁ...」

と汐梨さんはため息をついた。

「ごめんなさいね、無愛想な子で」

と汐梨さんは申し訳なさそうに言った。

「あの子は私の７歳下の弟。高校2年生よ」

高校？

と私が首をかしげると

「あ、１７歳ってこと」

１７歳...

私と同い年なんだ。

それより高校って...何？

「あの子、少し不器用なところがあるのよ。小さい頃いろいろあってね」

と汐梨さんは悲しそうな目をした。

どうしたのだろう。

いろいろってなんなのだろうか。

「あなたは何歳なの？」

と汐梨さんは私に尋ねた。

「１７歳」そう言って指であらわす。

すると

「海斗と同い年なのね！」

と汐梨さんは嬉しそうに言った。

「まぁ仲良くしてあげて。彼のことも海斗って呼び捨てでいいからね」

と汐梨さんは言うと

「今日はゆっくり休んで」

そう言って飲み物と食べ物を置いていってくれた。

ドアが閉まり再び部屋に一人きりになった。

汐梨さんも海斗も良い人みたい。

だから大丈夫だろう。

私はもう一度ベットに横になった。

やっぱりお父様は間違っていたんだ。