日向 葵(ヒナタ アオイ)18歳。
高校卒業して大学には行かず、就職しました。
つい、先月まで着ていた制服。
短くしていたスカートともおさらば。
明日からは社会人…
ドキドキするけど、いい人に恵まれるといいな。
そんな淡い期待をしながら
会社までの道を下見するため、私は家を出た。
まだ桜が散る、春の日差し。
家から歩いて30分。見えてくる大きなビル。
やっぱ凄いなぁ、ここ…
私が入社したのは、大手ブランドメーカー本社。
給料も福利厚生も良かった。
会社も綺麗でこんなところで働けるなら大学なんて行かなくて正解だった。
「近道も分かったし、帰ろ。」
徒歩30分って、自転車で行けば近いと思うけど歩くとなると結構遠いな。
でもスーツだし春だし、せっかくだから歩こう。
そう思いついたのは昨日だったから、歩きでのルートを確認するのが今日になってしまった。
来る途中にある桜並木。、
明日からこの道が通勤路になるなんて、すごく平和を感じる。
仕事、楽しめるといいな。
家の近くのスーパーに立ち寄る。
「お姉ちゃん、一人暮らしは慣れたか?」
一人暮らしの初日の日に、スーパーでの買い物の仕方を分からなかった時、優しくしてくれた店員さんに会った。
「橘さん!はい!もう慣れました!」
「それはよかったな。今時の子はレジの通り方もわかんないんだもんな〜。」
「あの時橘さんが教えてくれてほんとうに助かりましたよ〜」
橘さんはこのスーパーの店長で、ダンディって感じ…
かっこいいな、やさしいし。
「今日はキャベツが安いから買ってくといいよ!ちゃんと料理しな!」
「なんで私が料理しないって決めつけるんですか〜!、、、しないけど!」
身近にこんな会話をしてくれる人がいる。
今の私はツイテイル!
一人暮らしも寂しくない。
そう思って、私はキャベツをかった
「危ない!」
キャベツを手に下げて、家まで歩いていると。
どこからか飛んで来る大きな声。
どうやら、私が危ない…らしい?
そう思った時には衝撃が走った。
「キャアア!」
キキーッとブレーキ音。
一体何が起きたんだ。
背中、かな、後ろが痛い。
「ごめん!君、大丈夫?!」
どうやら自転車がぶつかってきたみたいだ。
「った〜。、、」
なんかもうどうすることもできない痛みが、込み上げて来る。
「あー、、ほんとごめん、、痛いよね?ごめんね、どうしよう、病院行く?」
しどろもどろに焦ってる男の人。
痛い。痛すぎるけど病院に行くほどでもない。血も出てない。
「あ、、大丈夫です。」
私より焦ってるから、大丈夫ですと言わざるを得ない感じだった。
「本当にすみません、、僕の前方不注意で、、」
「あ、ほんとうに大丈夫ですからご心配なく、、、あっ!」
「え?!」
つい声をあげてしまった。
さっき買ったキャベツがボロボロになっていた、、道路の端にある砂利に、無残にも転がっていた。
「あ〜、キャベツ、、」
キャベツ安かったからいいんだけど、せっかく橘さんがオススメしてくれたのに、、
チラッと男の人を見るとやってしまったの顔をしている。
逆に大丈夫かなこの人。罪悪感で押しつぶされてそう。
「あ、大丈夫ですから、もうどうぞ、」
どうぞ、行ってください、と言おうとした。
「キャベツ弁償するから!まってて!」
すると凄い勢いでスーパーへの道に戻って行った。
ここで放置されても困るんだがな、、