「んじゃ、戻ろう」

と、ラウルはあたしに手を差し出す。

あたしはそれを掴もうとした瞬間、

「あっ……またっ!」

フィルシアは胸を押さえて呻きはじめた。

「嘘だろっ!?」

レイクは目を見開く。

え、もしかして発作?

水中で発作なんてそうとうまずいっ!

あたしがそう思っていると、ラウルが素早くフィルシアを抱え上げプールから出した。

「薬は!?」

「バッグ……の中っ……うぅっ!」

フィルシアは自分のバッグがある所を指差す。

「あ、あたし、取ってくる!」

あたしはいけないと知りつつも、プールサイドを走ってフィルシアのバッグを取りに行く。

見覚えがあるフィルシアのバッグごと持って戻った。

「これだよねっ!? えぇっと……あ、これ!?」

と、あたしは白い粉が入った袋の束から一袋取ってフィルシアに飲ませた。

しばらくして、発作が止まったのか落ち着いたようだ。

「フィルシア、お前直ったんじゃなかったのかっ!?」

ラウルは目を見開いて怒鳴る。

「……平気よ。あんなの軽い発作」

「軽くても、発作は発作だ。今日、お前は休んどけよ」

と、イルも同じような口調でこう言った。

「本当に平気だってば」

「顔、真っ青にしてるくせによく言うぜ。大丈夫、心配しなくても。監督には俺から言っとくから」

レイクはすっと立ち上がった。

「フィルシアのことならあたしに任せて」

あたしは愛想笑いを浮かべた。

「あぁ、頼む。行ってくるよ」

「行ってらっしゃい」

あたしとフィルシアは三人を見送った。