プールにはそれほど人は来ていなかった。
ホテルに泊まっている人が十人くらい。
他はフィルシアたち。
「あらぁ、リンちゃん。昨日はラウルとよぉく眠れたかしらぁ?」
ビキニ姿のフィルシアはプールの中から、意地悪げな笑みを浮かべてあたしに問いかける。
「……」
この場合なんて答えればいいのか分からない。
あたしが迷っていると、ラウルがプールサイドに屈み込んでプールの水をフィルシアに無言でぶっ掛けた。
「きゃっ、何すんのっ」
「そういうプライベートな質問はお断りいたします」
ラウルは呆れ顔でこう答える。
フィルシアは不満げにむっと頬を膨らませた。
「それが彼女を連れてきてくださった人に対する態度なの」
「ありがてぇ、ありがてぇ」
ラウルはバカにしたようにこう言う。
さすがにフィルシアも怒ったらしく、フィルシアはプールの水を思いっきりラウルにぶっ掛けた。
「ぶぅわっ」
ラウルがびしょびしょになった姿を見て、あたしは思わず笑ってしまう。
言っちゃ悪いが、なんとも無様な姿だ。
「笑うなっ」
「……無理言わないでよ」
あたしは目を細めて笑っていた。
ラウルはあたしを睨みながら足をあたしの足に引っ掛ける。
「やぁっ!」
あたしはプールの中に落っこちた。
水中でラウルの笑い声を聞く。
「ラウルっ!」
あたしはザバッと音を立て、水中から出てラウルを睨んだ。
「お返し」
ラウルはにやりと笑う。
「おぉっ! そこのお嬢さん方、何してんのー?」
と、後ろからレイクがやって来る。
その後から呆れ顔でイルが歩いてきた。