「ラウル、そろそろ退いてくれる?」
「……嫌だね」
ラウルはにっと笑ってあたしの腕を掴む。
「ら、ラウルっ……んっ」
ラウルはあたしの唇を奪う。
その度に、あたしは心までもラウルに奪われているような気がした。
舌が絡み合うように、きっとあたしたちの運命も絡み合ってるんだ。
唇が離れた瞬間、ラウルはため息をついた。
「どうしたの?」
「欲が……」
「ラウルの変態っ!」
あたしはラウルの顔をつき押しした。
「ぐほぉっ」
ラウルはそう呻いてあたしの上から退いた。
「まぁったくっ! 油断も隙もありゃしないんだからっ」
あたしは顔を赤くして立ち上がろうとする。
と、体がぐらっと揺れた。
頭がくらくらとする。
「おっと」
ふらつくあたしをラウルが受け止めた。
「本当に大丈夫かよ」
「へ、平気平気っ! ただの立ち眩みだよ」
あたしは苦笑する。
「よし、プール行こうっ!」
「本気かぁ? ただでさえお前、体調不良なのに」
「本気本気っ! 体調不良なんかじゃないし、いつもどおり元気だもん!」
あたしは笑顔でガッツポーズして見せた。
ラウルはそんなあたしを見て噴き出す。
「何よ」
あたしはむっと口を突き出した。
「いや」
ラウルは笑いを殺して首を横に振る。
「ラウルのバカっ」
あたしはラウルの顔を狙って拳を向けた。
ラウルは素早く右手だけであたしの拳を止める。
「暴力はいけねぇな。ほら、さっさと着替えて行くんだろ」
「うんっ」
あたしは頷いて、水着と洋服を持ってバスルームに向かった。