「ラウル?」
いつまでも、あたしの顔を見つめているラウルを呼びかける。
「お父さん、どうかしたのか?」
「……え?」
ラウルは心配そうな表情を浮かべていた。
「いや、寝言でお父さんって言って俺に抱きついてきたから」
あたしはぼっと顔を赤くする。
「本当にごめん……」
「うん、少しムカついた」
ラウルは笑顔を浮かべているが物凄く怖い。
「あの、お父さんじゃなくてね……あたしなの」
「リン? お前がどうかしたのか?」
「うん、この頃急に心臓が痛み出すようになったの。生まれつき心臓病とかじゃないはずなんだけど」
あたしは首を傾げる。
「昨日もなったのか?」
「うん、でもね、短時間なの。短時間に激しい痛みが来るんだよ。それから直ぐ直るんだけどね」
あたしは心配そうに見つめているラウルを、安心させるようににっこりと笑った。
「何笑ってんだよ! 病院には行ったのかっ!?」
ラウルは本気で心配してるようだった。
「ま、まだ。でも、帰ったらちゃんと行くつもり。お父さんに心配かけたくないから」
「ああ、ちゃんと行けよ。お前を大切に思う奴は沢山いるんだからな」
あたしはくすっと笑って、
「分かってるよ」
と、頷く。
ラウルが本気で心配してくれることが嬉しかった。