「……ン……リンっ!?」

はっきりとしたラウルの声が聞こえて来る。

あたしはそっと目を開けた。

それと共に何かが零れ落ちる。

――涙。

「どうしたんだ、リン? 嫌な夢でも見たか?」

ラウルの心配そうな声が聞こえて来た。

……夢……そうだ、あれは夢。

過去に起きた記憶。

「ううん、ごめん、平気だ……よぉぉぉおお!?」

あたしは直ぐ目の前のラウルの顔を見てぎょっとする。

いつの間にかあたしはラウルの胸の中で眠ってたらしい。

「ちょちょっ、近っ近ぃぃいいやぁああっ!」

「ぐぁっ!」

あたしは後ろに下がり過ぎ、あたしが落ちないようにあたしを抱きかかえていたラウルと共にベッドから落ちた。

「ご、ごめんラウル」

あたしの目の前には、呆れたように見つめるラウルの顔があった。

あたしの上に覆いかぶさっているのだ。

あたしは苦笑しながら謝る。

「言っとくが、抱きついてきたのはお前だからなっ」

「で……しょうね」

あたしは苦笑しながら頷く。

ラウルから抱きつくことはないと自分で確信した。

でも、そろそろラウルに退いてもらいたい。

こっちは身動きが取れないんだから。