あたしは一人で部屋に戻り、冷蔵庫の中を確かめた。
「凄い。食材入ってるんだぁ」
入ってないなら買いに行こうと思ったんだけど、ハウワイ語なんて知らないから、買えない。
これがホテルのサービスなのか、分からないが助かった。
早速料理を始めようと、食材を取り出していると、外が騒がしいことに気付く。
あたしは窓を開けて外を見てみた。
と、いろんな人が窓から首を出して海を見ている。
「何だ、ここから撮影見えるんじゃん。ラッキー」
あたしは他の人と同じように首を出して外を覗いた。
顔が認識できるくらいの近さでラウルたちは撮影をしている。
そして、監督さんの声で撮影が開始された。
浜辺には女優さんが一人で歩いている。
今にも身投げしそうな表情を浮かべ、ゆっくりと歩いていた。
すると、女優さんの向こう側からラウルが歩いてくる。
女優さんとラウルの間が五メートル程になったとき、二人は顔を見つめながら立ち止まった。
「ふーん、恋愛ドラマなのかな?」
と、あたしは首を傾げながらその様子を見ている。
二人は目を見開き、走って嬉しそうに抱き合った。
と、あたしの胸がまた激しく脈を打つ。
「……っ!?」
あたしはその場に膝をついた。
痛みに耐えながらラウルを見つめる。
二人がキスした瞬間、痛みは絶頂に達した。
「うっ……あぁっ!」
あたしは洋服をぎゅっと握り締めて痛みに耐えた。
だんだんと痛みはひき、何とか立ち上がることは出来るようになる。
「前より……痛みが増してる……」
一番最初の痛みより、今の方がずっと痛かった。
ラウルが女優と触れた瞬間だったなら、NGなんか出したらあたしの身が持たない!
あたしは慌てて外を再び見つめる。
と、運よく一回でOkだったらしい。
あたしは安堵の息をついて料理を始めようとキッチンに向かった。