「あ、そうだ。写真」
あたしはカメラを持つ。
「撮るよ、笑って」
あたしとラウルはカメラに向かって微笑む。
「お、結構うまく撮れたな」
ラウルは写真を見てこう言った。
「うん。ねぇ、ラウル。これから沢山写真撮ろう。それで、思い出残していくの」
「ああ、いろんなとこ連れてってやるよ」
「本当っ!? その言葉、忘れるなよ!」
あたしはラウルを指差す。
「忘れない忘れない」
ラウルは苦笑した。
と、向こうからマネージャーのフェリウスがやって来る。
「こんなところに……あ、ごめんなさい。お邪魔だったね」
と、フェリウスは少し顔を赤くしながらあたしたちを見る。
あたしは慌ててラウルから離れた。
「だ、大丈夫ですよ」
「ラウル、もう直ぐ撮影始まるから早くしてよ」
「ああ、直ぐ行く」
フェリウスはそれだけ言うと、向こうに逃げるように帰って行く。
「恥ずかしぃ」
あたしは顔を両手で隠した。
まさかこんなとこを他人に見られるとはっ。
「リン、これ」
と、ラウルは全く気にしてないというような表情で、あたしにさっきアクセサリー屋で買った箱を渡した。