「あ、全然写真撮ってないよ。後で撮ろう」

「だな。リンの寝顔とか」

「だ、だめっ! なら、あたし寝ないっ!」

「冗談だっての」

ラウルは苦笑しながらあたしを見つめた。

そして、ラウルは海岸の砂浜に座る。

あたしもその隣に習って座った。

「あ、撮影の準備してるよ」

海岸のホテル近くで、撮影の準備をしている人たちがいた。

既に女優さんらしい人も来ている。

「いいの、行かなくて?」

「まだいい。なぁ、リン」

「ん?」

「……俺はお前が一番だと思ってる。どんな女優とキスしようがそれは変わらないからな」

ラウルは真っ直ぐとあたしを見てこう言う。

あたしはしばらく訳が分からず首を傾げていた。

他の女優さんとキス?

それって、もしかして今日やる場面のことかな?

そう言えば、フィルシアも女優さんに妬かれたら大変とか言ってたっけ。

……ラウル、あたしが妬くとでも思ってるのか?

「ラウル、あたし妬かないよ」

と、あたしはにっこり笑った。

「あたし、ラウルのこと信じてるから絶対妬いたりなんかしない。そりゃちょっとは抵抗あるけど、でも怒ったりなんかしないよ。だって、仕方ないもん」

それがラウルの仕事だから。

俳優なら仕方ない仕事だから。

少しは嫌だと思うけど、妬くなんて絶対しない。

そんなワガママ言う気なんてない。

ラウルは安心したように笑い、

「ありがとう」

と、あたしを抱き寄せる。

あたしはラウルに寄りかかった。