部屋に着いた。
けれど、相変わらずラウルはあたしの方を向こうともしない。
「ラウル、あの、本当にごめんなさい。あたし、ただラウルに会いたかっただけ……」
と、俯きながらラウルに言う。
ラウルはあたしの方を振り向き、そっとキスした。
「ラウル?」
「俺も会いたかった。祭りの日以来だったから」
ラウルはにっこりと微笑み、あたしを抱きしめる。
祭りの日以来って言っても、3日くらいしか経ってないけど、ラウルに会いたかったのは事実だ。
「フィルシアが迷惑かけただろ」
「ううん。まぁ、花屋の店長とバイト仲間の一人には迷惑かけちゃったな。後でなんか買って行ってあげないと」
あたしは苦笑しながらこう言う。
「花屋の店長、怒ってるんじゃないか? 無理矢理キスなんかされて」
「ロアさんには他の皆より少し高めのお土産にしとくよ」
あたしたちはくすくすと笑い合った。
「夕方まで自由行動だと。どっか行くか?」
「うん、行く。ラウルはハウワイ島来たことある?」
「あぁ、結構な。近くにモールがあるんだけど」
「行きたいっ」
あたしは子供のようににっこりと微笑み頷いた。
ラウルは持っていたサングラスをかける。
「一応有名人だし」
と、決めてみせる。
あたしはフィルシアの「存在薄い」という台詞を思い出して、ぷっと笑った。
「笑うなよ」
「はいはい、行こう、有名人さん」
あたしは微笑みながらラウルの腕を掴み、部屋を出た。