「今の受付の子、だぁれ?」

フィルシアは笑顔で問う。

あ、ちょっとあたしもそれ気になってた。

「ファンだとさ」

「なぁんだ。ナンパしてるのかと思った」

「俺がそんな軽い男に見えるか? お前と一緒にするなよ」

「そうそう、さっきキスした花屋の店長は結構よかったわぁ」

あたしはそれを聞いて目を見開く。

そ、それってロアさんのことっ!?

「キスしただぁ!? しかも花屋の店長って……」

「大変だったんだからね。拉致してくるの。はい、プレゼント」

フィルシアはあたしをラウルの方に突き飛ばす。

「あっ」

と、あたしは声を漏らしてラウルと激突した。

「へ?」

ラウルの戸惑ったような声が聞こえてくる。

あたしはまともに顔も見れないで俯いていた。

「リンっ!? どうしてここにいるんだっ!?」

「あたしが拉致してきた」

フィルシアはえっへんとえばる。

「あの、ごめんなさい」

あたしはなんとなく謝っておいた。

「君がラウルの彼女さんかぁ!」

と、ラウルの後から来た男性が、あたしの顔をまじまじと見つめる。

「リンです」

「僕はラウルのマネージャーのフェリウス。宜しく」

フェリウスは眼鏡をしていて、神経質そうな印象があった。

「宜しくお願いします」

あたしは軽く会釈する。

ラウルは困ったように頭を掻いていた。

「それじゃ、撮影は夕方からだからそれまで自由行動ね」

フィルシアはそう言って、フェリウスを連れてあたしたちから離れていく。

あたしとラウルはなんとなく沈黙した。

「……部屋何号室?」

と、ラウルが口火を切る。

「……ラウルと同じ」

「……じゃ、行こう」

ラウルは部屋が一緒だということに何も言わず、あたしの手を掴んで歩き出した。

あたしはラウルの背中を心配そうに見つめる。

さっきから、一回もあたしと目を合わせてくれない。

ラウル、怒ってるのかな。

と、あたしは心の中で不安に思った。