あたしはこっそりとため息をつき、

「フィルシアって本名なの?」

と、あたしはフィルシア耳打ちした。

「ううん、芸名。花屋さんは本名じゃなくてニックネームなんでしょ? ラウルだって芸名よ」

「誰がつけたの?」

「誰かな? いつの間にか呼ばれてた」

フィルシアはにっこりと微笑む。

「へぇ」

「あぁ、ラウルの驚く顔が目に浮かぶわぁ~」

と、フィルシアは両手を組んでこう言った。

「あたしはどんな顔してラウルに会えばいいのよぅ」

あたしは小声でこう言う。

そして、車に乗り込んだ。

十分ほど走って、ホテルは海が見える高級な所にあった。

あたしはホテルを見上げる。

「すっご。ラウルってかなり人気なんじゃない」

「まぁね、でも人込みに紛れ込むと存在が薄いから全然分からないわよ」

フィルシアは笑顔で酷いことを言う。

イルさんとレイクさんは先に部屋に行った。

ホテルのロビーは沢山の観光客で賑わっている。

と、受付のところで女の子と何やら誰かと話している人がいた。

見覚えがあるな……アロハシャツを着た水星人の男性。

「ラウルー。ごめん、待たせて」

と、フィルシアはあたしを自分の後ろにやってラウルを呼ぶ。

ラウルは受付にいる人と別れて、うんざりしたような表情でこっちにやって来た。

その後を追うように男性がやって来る。

「遅い」

ラウルはフィルシアを睨む。

あたしの存在にはまだ気付いてないようだった。