「時差もないから便利よねー」

フィルシアはサングラスをかけて空を仰ぐ。

時差ボケ防止のために、時間も出発した日と同じ時間になるのだ。

「おい、遅いぞ」

と、空港の外では知らない人たちが二人来ていた。

「ごっめんなさぁーい。ちょっと寄り道してたら遅くなっちゃった」

フィルシアは両手を合わせて謝る。

一人の男性は三十代くらいの火星人。

もう一人の男性は二十代後半くらいの金星人だった。

「フィルシア、この子は?」

機械を持った男性があたしに気付いて問う。

「あ、この子はラウルの彼女よ。ライバルが多くて、捕まえてくるのにどれだけ大変だったか」

フィルシアはため息をついて肩を叩いた。

あたしは単刀直入に言われ、赤面する。

「あ、あの、すいません、来てしまって」

正確には連れて来られたんだけどねと、心の中で思う。

もう正直薬の効果は切れたからどんなこと思ってても大丈夫。

「へぇ、君が噂のラウルさんの彼女? 可愛いねぇ! 僕、レイクっていうの。今度お茶しよう」

と、金星人のラルクに誘われる。

「こら、人の彼女誘惑するんじゃないのっ」

フィルシアはレイクの頭を叩いた。

「あたし、リリーンです。皆からはリンって呼ばれてます」

「そう、撮影現場見に来たの?」

このレイクって人、こりずにあたしの手を握って問う。

「はい、まぁ」

あたしは苦笑しながら答えた。

「レイク、ラウルに言いつけるぞ」

と、火星人の男性が横目でレイクを見つめる。

「へいへい」

レイクは名残惜しそうにあたしの手を離した。

「俺はイル。好きに呼んでくれ、お嬢ちゃん」

イルは愛想良く微笑んだ。

「あ、はい」

「じゃ、行きましょう。ラウルたちはホテルでしょ?」

「あぁ、先に行ってる。きっと遅いって怒られるぞ」

レイクは車の方に向かって行く。

「大丈夫。リンちゃんがいるから」

フィルシアはにっこりと微笑んだ。