「まぁ、あの人のことだから死ぬってことはないな」

「うん、それはない。あんな戦闘力、何処で身につけたんだろ」

と、二人でリビングに向かおうとした瞬間レオが急停止した。

あたしはレオの背中に衝突する。

「いったいな、何で止まったのよ」

「下がれ」

レオの声はいつもより低かった。

あたしはリビングの方を覗き込む。

そして、目を見開いた。

「こんばんはー」

ソファで手を振ってる女性――フィルシアだった。

「何でっ!?」

あたしは叫ぶ。

と、フィルシアは立ち上がってレオの方に近づいた。

「リンちゃん、行こう」

「い、行くっ! じゃなくて行きませんっ!!」

口が勝手に動く……。

フィルシアはにっこりと笑い、

「なんだ、少しは行きたいって気持ち、あるんじゃない」

あたしは顔を火照らせ、口を塞ぐ。

レオは呆れたようにあたしを見ていた。

「さ、そこ退いて」

「ロアさんに何したんですか」

レオはフィルシアを睨む。

「何も。ただ眠らせただけ。ちゃんと明日になったら起きるから」

「リンは渡しません」

「リンちゃん、モテるのねぇ……何でラウルなんか選んだのか理解できないわ」

「あなたが帰ってくれるなら、そういうことにしておいていいです」

あたしは口を押さえたまま、目を見開いてレオを見つめた。

ちょっと、そういうことってどういうことですかっ!?

「帰ってください」

「あたしが帰ったら、何されるか分かんないわよリンちゃん」

フィルシアはにっこりと笑ってあたしを見る。

「何もしねぇよっ!」

「……どうだか」

また思ったことが口に出る。

レオはぎろっとあたしを睨んだ。