「はぁ、早く時間が経たないかなぁ」

と、あたしは寝間着に着替えて時計を見上げた。

その瞬間、

「……あっあぁ!」

また心臓が痛み出す。

あまりの痛さにあたしは顔を歪め、蹲った。

「……はぁっ……うぅっ!」

「どうしたっ!?」

呻き声を聞いたレオが部屋に入ってくる。

「また……胸が……あぁっ!」

「心臓!? お前、病気にでもなってんのか!?」

あたしは首を横に振った。

そんなはずない。

心臓病なんてこと父から聞いた事もなかったし、もし心臓病なら激しい運動なんて出来ないはず。

あたし、この前思いっきり走ってたんですけどっ!

「じゃ、何で……」

「うっ……きゃぁっ……!」

痛みは絶頂に達して、あたしは叫ぶ。

心臓を誰かに掴まれてるようだった。

そして、すっと痛みは消える。

「はぁっ……はぁっ……」

「大丈夫か!?」

「……ん、もう、大丈夫」

あたしは頷いてふらふらと立ち上がった。

「何なんだ、あのときだって急に……」

レオはまだ心配そうにあたしを見ている。

「分からない。でもあのときはフィルシアがレオに触れた瞬間だった」

「……どうしてフィルシアが男に触るとお前が苦しむんだよ?」

あたしは首を傾げた。

痛みは一時的なもので、激しいけど直ぐに消える。

「……でも、そういうことならロアさんが危ないかもな」

レオは顔をしかめた。

「どういうこと?」

「お前が苦しむってことは、フィルシアが男に触れたってことだろ? ってことは……」

「あ、ロアさんっ!」

「まぁ、あの人があの女に手をだすってことはないだろうから……やられたんだろうな」

あたしは目を見開いた。

「あのロアさんがやられた……? そんなはずない! と、思いたい」

レオは横目であたしを見つめていた。