「ふぅん」

フィルシアは興味深そうにロアの話を聞いていた。

「ほら、分ったら早く帰って」

ロアはそこまで言うと、再びパソコンの前に向き直る。

だが、フィルシアはまだ不満そうに口を曲げ、恨めしげに鍵を見つめた。

「これ、誰にでも開けられたりして」

と、フィルイアは鍵部分に手を触れた。

「あっ!」

ロアは思わず叫ぶ。

と、鍵は簡単に開いてしまった。

「何これ、ただのはったり? 鍵の役目果たしてないじゃない」

フィルシアは、きゃはっと無邪気にはしゃいで封筒を取り出す。

「こら、返しなさいっ!」

ロアは慌てて立ち上がって、フィルシアから封筒を取り上げようとする。

「やだよっ」

フィルシアは封筒を高く持ち上げて取れないようにした。

が、背はロアの方が高いため届いしまう。

フィルシアはソファの上に立つ。

「ほら、返してっ!」

「いやぁ、取れるもんなら取ってみなさいよ」

フィルシアは意地悪げにロアにこう言う。

「年上をからかうんじゃ、ないっ!」

「きゃっ」

ロアはフィルシアの片足に自分の足を引っ掛けて、バランスを崩させる。

ロアはその上に被さり、フィルシアの手首を押さえた。

「何すんのっ、放してっ!」

フィルシアは言葉だけで、抵抗はしなかった。

「……君」

ロアは呆然とフィルシアを見つめた。

一瞬、フィルシアがリンに見えたのだ。

「……いや、気のせいだね。早く封筒を返しなさい」

「嫌」

「君、嫌じゃないの? 知らない男にこんなことされて」

フィルシアはぎろっとロアを睨み、

「嫌でも抵抗できないのよ。体が不自由だから」

と、低い声でこう言った。