「さいってい。鍵かかってるし」

フィルシアは机の鍵を見つめて顔をしかめる。

「まだやるんですかぁ?」

「当たり前でしょうが。この鍵は……げ、指紋感知付き」

「そう、だから僕しか開けられませんよ」

ロアはフィルシアを気にせず、ノートパソコンを出してお金の計算を始める。

「どうしてあなたは邪魔するのよ? 関係ないでしょっ」

「うちのアルバイトちゃんだからねぇ、あの子が傷つくとこなんか見たくないし」

「傷つく訳ないでしょう。ラウルはちゃんと分かってるのよ。リンちゃんが未来人だってことぐらい」

「じゃ、どうしてあんなにリンちゃんは嫌がるのかね?」

ロアはフィルシアの方を向きもせずに問う。

「そんなの知らないわよ」

「あの子が行きたいってなら話しは別だけど、嫌がってるのに無理矢理つれてくのはよくないねぇ」

「嫌がってるんじゃなくて、ただ単に恥ずかしいだけなのかもっ!」

「そうだとしても、あんまり僕はリンちゃんに行ってほしくないな」

フィルシアは片眉吊り上げてロアを見る。

「……あなた、リンちゃんのことが好きなの?」

「いや。でも、まぁ親代理人みたいなもんだから」

「親代理人ってどういうことよ」

ロアはため息をつき、フィルシアの方を向く。

「他人の君に教えたくはないんだけどね。リンちゃんのお母さんはリンちゃんが生まれたときに死んでるんだ。あの子のお父さんは俳優でぜんぜん面倒なんか見れる状況じゃないわけ。だから、しばらくは母方の祖父母に育てられてたらしい。でも、人って歳をとるからそのうち面倒が見切れなくなった。そのときリンちゃんは十六歳。ある程度一人で生活は出来るようになったけど、やっぱり一人は心配だと学校の先生が自分の弟が花屋をやっているから、バイトをして一人でいる時間を減らしたらと提案したんだ」

「その弟があなた?」

ロアはゆっくりと頷いた。

「姉が教師でね。よくリンちゃんのことは聞いてたんだ。リンちゃんとは歳もそう離れてないら、すぐ仲良くなれたよ」

と、ロアは嬉しそうに微笑んだ。

最初の頃は物凄く警戒されて、どうなるかと思ったくらいだった。

まぁ、殆どレオのお蔭と言えるだろう。