「きゃっ」

それは音を立てて地に落ちる。

あたしとレオは目を見開いてロアを見た。

こ、この人、何者だよっ!?

「どうして時間停止時計なんて持ってるんですか? 一般人は普通手に入れるのは難しいはずですが」

ロアは笑顔で問う。

時間停止時計とは、一時的に時間を止められる物。

普通、一般人はなかなか買えない筈。

フィルシアは引きつった笑みを浮かべ、

「あたし、女優だから色んな物が貰えちゃうのよ。どうしてもこの子はダメなのねぇ」

「はい、申し訳ございませんがお帰りくださいませ」

と、ロアはパンッと手を叩いた。

その瞬間、ロアの手の中に落ちていたはずの時間停止時計が出てくる。

「えぇっ!?」

あたしは声を出して混乱する。

これもこの人が特技の一つのマジック。

きっと、この人魔法使いだわ。

「嫌」

フィルシアは悔しそうに時間停止時計を受け取り、一言こう言う。

「嫌って、君ねぇ」

フィルシアは素早くあたしの口の中に何かを入れる。

「ふむっ!?」

あたしは目を見開いてフィルシアを見た。

ロアは苦虫噛み潰したような表情を顔に浮かべている。

「チケットは何処?」

フィルシアはこう問うと、あたしの口から手を放した。

「休憩室にあるロアさんの机の引き出しのなっむぐっ」

あたしの台詞を中断させたのはレオだった。

レオはあたしの口に手を当てている。

ヤバい、これって嘘がつけなくなるんじゃなかったっけ!?

フィルシアめ、この正直薬の効きめは五時間消えないのに!