「違う!」

あたしは慌てて否定した。

「顔、真っ赤だよ。お子様だねぇ」

「ロアさん、からかわないでください! あたし、真剣なんですよ」

「ラウルだってお前を襲おうなんて思わねぇだろ。お前たちは時がずれた者同士なんだから」

レオはさらっと酷いことを言う。

時が一緒だったらあたしなんてとっくに襲われてるもんねっ!

ってか、あたしは何を意地になってるんだ!

「そうだよね……でも心配だから、やっぱり泊まらせてください」

「そうだなぁ、もしかしたら寝れないかもよぉ? パソコン打ってる音とか明かりとかで」

「お父さんが夜中に帰ってきて、ガザゴソやってる音聞いても大丈夫ですから。それからこの封筒、ロアさんの机の引き出しの中に入れておいてください。鍵しめてくださいねっ!」

あたしはそう言って、チケットが入った封筒をロアに渡した。

「はいはい」

ロアは苦笑しながらあたしから封筒を受け取って、机の引き出しにしまいに行った。

「よし、これでバイト後に洋服持って来てここに泊まれば完璧。安心したわぁ」

あたしは胸を撫で下ろして仕事に戻った。



□■□■□■



「呆れたねぇ、リンちゃん」

ロアは休憩室にある自分の机の中に封筒を入れ、鍵をしめこう言う。

「あいつ、ある意味で失礼ですよ」

レオは目を細めて休憩所からリンを見つめた。

「本当だね、僕が男だってこと全然分かってないみたいだ」

ロアは苦笑した。

「まぁ、それほどロアさんのことを信用してるってことですよ。分かってますね、ロアさん」

「へぇへぇ、リンちゃんに手なんか出したら君にぶっ殺されるからね。触らぬ神に祟りなし」

「その場合、リンが神で俺が祟りですか」

「その他に何があるんだよ?」

「いえ、何もないです」

レオは深いため息をついて休憩所を出た。