「観念しなさいって」
「昨日付き合ったばっかなんですよ?」
「だから?」
「いや、だからって……嫉妬とかしてないんですか?」
あたしは半眼でフィルシアを見つめる。
フィルシアはにっこりと笑って、
「してる訳ないじゃん」
と、本当にないみたいに言う。
うっそぉ、この人本当にしてない訳っ!?
「時間は明後日の朝6時。逃げてもいいけど、その代わりとことん追い回すからね。あと、服とか用意してなかったらこっちで用意するから」
フィルシアは不気味に笑う。
あたしは何が何だかもう分からなかった。
頭がふらふらする。
「それじゃ、宜しくっ!」
フィルシアは手を振ってあたしの前から去って行った。
「夢だわ、うん、そうに違いない」
あたしは、ははっと笑い飛ばしてタイムマシーンに乗り込もうとする。
が、タイムマシーンの前の石に躓いて危うくこけそうになった。
元の時代に戻って花屋。
「お願いします、ロア様っ! 今日と明日、明後日だけこの花屋に泊まらせてくれませんかっ!?」
あたしは指を組んでロアに願いこむ。
ロアは目を白黒させ、あたしを見ていた。
「何が起きたの?」
「あたし、家にいたら拉致られるかも知れないんですっ! お願いしますっ!!」
「僕はいいけど、多分僕も泊まると思うよ? 君たちの給料計算がまだ残ってるし、輸入額とかも整理しなくちゃいけないから」
「いーです! ぜんっぜんいーです! もう、家賃でもなんでも払いますから3日だけあたしを匿ってください!」
「お、言ったねリンちゃん。じゃ、一日五万円で!」
「すいません、今さっきの取り消しで」
あたしは苦笑しながらこう言った。
「何があったんだよ」
と、レオがあたしに問う。
「悪魔がくるのよぅっ! 絶対さらわれるっ!」
「被害妄想じゃねぇの?」
「違う! 本当にヤバイんだって!」
「何があったの、リンちゃん」
「言えない!」
「なるほど、ついにリンちゃんも本当の女になるの?」
ロアの台詞にあたしはびくっと反応した。
何であんたはそんなに勘がいいんだよっ!?