「どうしてあたしに会いたかったんですか?」

あたしの質問に、フィルシアはにっこりと微笑んで封筒をあたしに渡す。

「これ、ハウワイ島までのチケット」

「……は?」

「今度ね、ハウワイ島でドラマの撮影があるの。ラウルも出演してて、そこまで行かなきゃいけないのよ。その間、二人共離れ離れで可哀想だからあたしがチケットとっておいたってわけ。ホテルも心配しないで。ちゃぁんと同じ部屋、とっておいたっ!」

フィルシアさんの言ってることが全く理解できなかった。

と、いうか理解したくなかった。

「すいません、ちょっといいですか」

「うん、全然平気」

フィルシアはにっこりと笑ったまま答える。

あたしはタイムマシーンに乗り込み、



「い…やぁぁぁぁぁあああああああああ!!」



と、絶叫した。

そして、何事もなかったようにフィルシアの方に戻る。

「で、何のお話でしたっけ?」

あたしはにこやかに訊ねた。

「逃がさないわよ。どこの時代かもあなたの家の場所も、全て分かってるんですからね」

フィルシアはにたりと笑った。

こ、この人、あたしと同い年ぐらいだよねっ!?

「ら、ラウルはっ!? このこと知ってるんですかっ!?」

「ううん、知らない。だから面白いんじゃない」

「そんなっ! ダメですっ! 行けないですっ!」

「ダメでも行けなくても、リンちゃんの時代まで飛んで拉致するから大丈夫っ」

「大丈夫じゃないですっ! ちょ、ラウル呼びますっ!」

あたしはラウルの家に押しかけようとする。

「残念でしたぁ、ラウルは今コメディ番組の撮影中だよー」

フィルシアはそんなあたしの背に向かって叫ぶ。

あたしはぴたっと動きを止めた。