こんな……こんな偶然あっていいのか?
いや、ダメだよねぇ。
と、あたしは自問自答していた。
あたしは電話があった時代と場所に行きました。
行ったは良かったですよ。
良かったんですけどねぇ。
何故だか、どう見てもラウルのアパートの前なんですよね。
「家、間違えたかなでも、電話の回線が間違ってるなんて思えないし」
そう、この店のタイムマシーンは店の電話の回線と繋がっているのだ。
だから、場所を間違えるはずはない。
……はずなんだけど。
「あ、お花屋さんっ。こっち」
と、二階の階段の所で木星人の女性が手を振っている。
なんか、知ってる顔だった。
どっかで見たことあるような顔。
「すいません、これファームの花束です。えぇーと、三百円ですね」
「はい、ありがとう」
女性はにっこりと微笑んでファームの花束を受け取り、お金をあたしに渡す。
「あの、あなたのお店にリンって子いるかな?」
それから、女性は少し遠慮がちにこうあたしに訊ねる。
あたしは小首を傾げ、
「あたしですが」
と、答えた。
すると、女性は元々大きい緑の瞳をさらに大きく見開く。
「あ、あなたがっ!?」
「はい……皆からはリンって呼ばれてますけど?」
「そうっ! あなたに会いたかったのよぉっ!」
女性は本当に嬉しそうにあたしをぎゅっと抱きしめ、飛び跳ねる。
「はっ、はぇっ!?」
あたしは訳が分からず混乱していた。
「あなた、リンちゃんでしょっ!? ラウルって奴知ってるよねっ!? ってか、あいつの彼女だよねっ!?」
「え、あ、はい、まぁ……」
「じゃぁ、あたしのことはフィルシアって呼んで」
「フィ、フィルシアさん……?」
「そっ。あー、ラウルから聞いてないかな? 幼馴染で、病気しがちな奴って」
今度はあたしが目を見開く番。
「あぁっ!」
と、叫んだ。確かに聞いてたわ。
ラウルから何べんもっ! 病気しがちで、妹みたいな幼馴染。
フィルシアさんのことだったのかっ!
「聞いてたんだ……あいつ、何て言ったのかな」
フィルシアは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。