店に電話の音が鳴り響いた。
あたしはその電話に出る。
『あ、そちらお花屋さんであってますか?』
電話からは若い女性の声が響いてきた。
明るく、凛とした声。
「あ、はい。そうですっ」
『ファームのお花が欲しいんですけど、あります?』
「えぇーと、ちょっと待っててくださいねっ!」
あたしは保留のボタンを押した。
「あー、レオっ! ファームのお花ってある?」
と、花が置いてある所の近くで掃除をしていたレオに問う。
あんまりこの時期、咲かない花だからあるか分からない。
「ある」
レオは無表情でこう告げた。
怒っているのは、手に取るように分かる。
「サンキュー」
あたしはそんなレオを放っておいて、再び電話に向き直る。
「あ、すいません。ありますよ」
『良かった。じゃ、2098年の8月17日に届けてくれますか?』
「分かりました。直ぐお届けします」
そう言って、あたしは電話の回線を切る。
「……2098年の8月17日」
それって、あたしがラウルとお祭りに行った次の日。
「っんな偶然」
ある訳ない。
でも、実際に起きちゃったんだしな。
「はい、ファームの花束」
と、リムから花束を渡される。
「わっ、あ、ありがと」
「行ってらっしゃぁい」
ロアはにっこりと笑って手を振っていた。
「はい、行ってきますっ」
あたしは勢いよく店から出て行った。