「ラウルか」

レオはあたしとすれ違うときに、ぼそっとこう訊いてきた。

「あたしが誰と飲もうが、あんたには関係ないでしょうが」

「……一つだけ、言っておく。あいつは過去の人物だぞ」

「分かってるよ、それくらい。あたしが誰と付き合おうが、レオには関係ないでしょ」

「……付き合ったのか!?」

「あっ……」

しまった。

つい口が。

レオの台詞にロアとライムが反応した。

「お前、昨日どこ行ってたんだ!?」

「……お祭りだよ。ラウルに誘われたから行ったの。そこで……」

ふと昨日のキスを思い出す。

自然と顔が熱くなるのが分かった。

「……そこで……何したんだ?」

「……うるっさいなっ! ほらっ、仕事っ仕事っ!」

あたしはしっしっと、野良猫を追い払うようにラウルを追い払った。



□■□■□■



「やっちゃったねぇー。リンちゃん」

ロアは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。

「何をですか?」

ライムは訳が分からないというような表情を浮かべ、小首を傾げている。

「そうだなぁ、あれくらいの顔の赤さだったら、キスくらい」

ライムはロアの台詞に、ぼぉっと顔を赤くした。

「ライムちゃんも子供だねー」

「ろ、ロアさんはどうなんですかっ!」

「ん、僕? ……聞きたい?」

ロアはにたっと不気味に笑った。

「……聞きたくないです」

ライムは首を激しく横に振り、仕事に戻る。

「仕方ないですね」

と、横からひょっこり顔を出しリムは言う。

「何が?」

ロアは眠そうに訊いた。

「……恋愛感情なんて、人にはどうしようもできません」

「そうだねぇ」

「……私はしたことないですけどね、恋なんて」

リムは無表情で感情的なことを言う。

ロアは驚いたようにリムを見た。

「珍しいね、リムちゃんがそんなことに首を突っ込むなんて」

「……別に」

「恋愛経験ないなら、いつでも僕あいてるからねぇ」

「……それはどうもありがとうございます」

リムは半眼でロアを見つめて離れる。

ロアは苦笑しながらリムを見ていた。