ようやく聞き取れるくらいの声で、ラウルはこう言った。
あたしは口さえ動かせないでいる。
「……俺、色んな人から花束だとか貰うけど、お前から貰う花束が一番嬉しい」
あたしの頭の中がパニック状態に陥る。
何故あたしなんかを好きになったんだか、全くもって理解できなかった。
だって、あんな失礼なこともしたし、花束だってあたしからのプレゼントなんかじゃなくきちんとお金だって貰ってる。
『何故』という単語だけがぐるぐるとあたしの頭の中を回っていた。
「……あ……うぅ……」
やっと声が出たが、言葉にはなってなかった。
暗くてラウルが赤い顔をしているのか分からない。
けど、物凄く緊張してるのは分かった。
あたしだって半端なく顔が熱いし、心臓なんてラウルに聞こえちゃうんじゃないかってくらいの音量でバックンバックン鳴ってる。
「お前が未来人だってことは知ってるから、諦めようとは思ったんだけど…」
「う……ん」
「悪い、無理だった」
いやいやいや、そんな爽やかに「悪い」なんて謝らないでいただきたい。
でも、内心凄く嬉しかった。
だって、こんなかっこいい人があたしに告るなんて夢にも思ってなかったし、これからもきっと思わなかっただろう。
「いつかは、別れが来る。だけど少しの間だけ、俺の傍にいてくれないか。傍にいてくれるだけでいい」
「で、でも……」
やっと言葉になったと思えば、物凄い裏声が出てしまう。
あたしはゴホンと咳をし、再びラウルに向かった。
「でもね、ラウルの傍にはもういるでしょ? あたしがそっくりだっていう幼馴染さんが」
「そんなの、関係ねぇよ。俺はお前が好きなんだ」
……ヤバイ、幸せ感じてる。
いや、あたし物凄い幸せだ。
こんな幸せで言いのかってくらい幸せ。
「嬉しい」
あたしはにっこりと笑った。