輪は一人十個渡された。

「一つは入れろよー」

ラウルは後ろから嫌味を言う。

「分かってるよっ」

あたしはむっと口を突き出して輪を握り、狙いを定めて投げる。

が、やっぱり入らん。

「何で入んないんだろ」

最後の一個であたしは首を傾げる。

「下手だから」

ラウルは意地悪げにこう言った。

「人間には、得意なことと不得意なことがあるのっ」

「……ほれ、貸してみ」

ラウルはあたしの後ろから輪を持っていた手を握る。

あたしはびくっと身体を震わせた。

「……あ、悪い。嫌か?」

「いっ、いえっ! ぜんっぜんっ! 全くっ!」

あたしは首を激しく横に振る。

「いいか、よく狙って……投げる」

ラウルの動きに合わせてあたしは輪を投げる。

と、奇跡的に輪は棒に入った。

「さすがぁー」

あたしはにっこりと笑ってこう言った。

「まぁな」

ラウルは子供のような笑顔を顔に浮かべている。

「はい、これ景品ね」

と、おじさんから貰った景品は物忘れ草だった。

物忘れ草は、確かある人が煎じてある人に飲ませると、煎じた人のことを一時間だけ忘れるって草だったかな。

こんなのが祭りの景品になってるとは、知らなかった。

他にも、この草を植えて花を育てるようなこともする。

「ラウル、パーフェクトじゃないとダメだよ」

ラウルの番になって、あたしは後ろから声をかけた。

「プレッシャーかけんなっ」

ラウルはあたしを少し睨んで狙いを定めた。