「わぁ、お祭りって感じだわぁ」

あたしは子供のようにはしゃいでいた。

「何やる?」

「射撃やってみたいなぁ」

「お、俺、凄い得意。やろう」

ラウルはあたしの手を掴んで引っ張る。

「は、はいっ」

あたしは顔を赤くしながらついて行った。

「おじさん、二回分ね」

「はいよ」

屋台のおじさんは銃を二本渡してくれる。

的は駄菓子やぬいぐるみ、おもちゃだった。

「あ、あのウサギのぬいぐるみ可愛い」

「っんじゃ、あの的狙って」

と、ラウルに指差される。

あたしは片目を瞑って撃った。

けれど、外れる。五個中、見事に五個外れ。

「へったくそだな」

「じゃぁ、ラウル見せてよ」

「よく見てろ」

ラウルはぬいぐるみの的を狙って撃つ。

と、的はカランと音を立てて落ちた。

「すっごーい!」

あたしは手を叩いて褒める。

「次は?」

「じゃぁ、あの小さい的」

小さい的は林檎飴無料券だった。

他にも綿飴無料券だとか、金魚すくい無料券だとか沢山ある。

でも、的の面積が本当に小さいからこれはさすがに無理かな。

「よし、無料券狙いな」

ラウルは得意げに笑って再び狙った。

その横顔がとても子供のように見えて、少しおかしく見える。

あたしはくすっとラウルにバレないように笑った。

ラウルが撃った四発の弾は、全て無料券に的中した。

「うっそぉ」

と、あたしは呆然と空しく落ちた的を見つめる。

「はい、これ景品ね」

屋台のおじさんは苦笑しながらラウルに景品を渡していた。

こりゃ、屋台泣かしだわ。

「これ、やるよ」

ラウルは、あたしが狙っていたウサギのぬいぐるみを差し出してきた。

「いいの?」

「俺、そんなケチ臭い男じゃないつもりだから」

ラウルはにっと笑ってこう言う。

「ありがと」

あたしはぷっと笑って、ラウルからぬいぐるみを受け取った。