「……えっ!?」
あたしは思わず顔を上げた。
レオは顔を赤くして、あたしから目を逸らしている。
恥ずかしそうに、頬を右の人差し指で掻いた。
「……じゃあね、もし、その人に間違えて……間違えてだよ? 間違えて……ついたりしたら……どうする?」
「何?」
「だから! もしその人に……その……だ、だき……ついたりしたら……どうする!?」
うぅ、顔から蒸気が出そう。
何でこんなことを、レオに訊かなくちゃいけないのよ。
「……お前、ラウルって奴のこと好きなのか? まだ二回しか会ったことないのに」
「……分かんない。でも、過去の人だから……多分違う」
「じゃあ、何でそんなに恥ずかしがってんだ?」
あたしは俯いた。
まだ二回しか会ってないのに、どうしてこんなになるんだろう。
自分でも不思議だ。
「お前さ、男に抱きついたことなかったんじゃねぇの?」
「へ?」
「いや、人に抱きついたことすらないんじゃねぇのか? お前の母親はお前が小さい頃に亡くなって、父親も俳優だから仕事で忙しくてお前になんて構ってやれなかったんだろ? だからラウルだけじゃなくて、きっと父親でもなるんじゃないか、そうやって」
あ、そうかも知れない。
そうだ、あたし、家族の誰にも甘えずに育ったから、そういう行動に敏感なのかも知れない。
「よし、試してみるか」
そう言った瞬間、レオはあたしの真正面に移動した。
「は? ……きゃっ」
そして、問答無用で力強くあたしを抱きしめる。
「ひっ……ひゃぁぁぁぁああああ!!!!」