「よう、大学早く終わったから、なんか手伝おうかと思って来たんだけ……ど?」

レオが店に入った瞬間、店には異様に重苦しい空気が漂っていた。

空気の源を辿ると、リンが俯きながら箒で枯葉を掃いている。

と、いうより掃く動作をしていた。

「何かあったんですか、あいつ…」

と、レジにいるロアにレオは訊ねる。

「それが、分からないんだよねぇ。ラウルってお客から注文を受けて、帰って来てからずっとあんなん」

「物凄い失敗を犯したみたいだよ?」

箒を持ったライムが入ってくる。

「……あいつの周りに負のオーラが見えるのは俺だけか?」

「大丈夫、あたしにも見える」

「間違いなく見えるねぇ」

「何やらかしたんだか」

レオはため息をついてリンに近づく。

「れ、レオ! 触らぬ神に祟りなしだよっ!」

と、ライムはレオを止めようとする。

が、時既に遅し。

レオはリンの肩を掴んでいた。



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いきなり肩を誰かに掴まれ、あたしはびくっと体を震わせた。

ゆっくりと自分の肩を掴む者の顔を見る。

「何」

「何、じゃねぇよ! こんな重い空気流してりゃ、誰だって不審に思うだろうがっ」

「……悪いけど、今あんたと話す気分になれないの」

「お前なぁ! 何が話す気分になれないだっ! 俺はお前と話す気分なんだ! お前の気分なんて知らねぇよ」

「うるっさいな、ほっといて」

「このままほっとくと、お前のせいでお客こねぇだろ」

もう嫌だ……自分に失望したわよ……あんな失敗しでかすなんて……もう……消えちゃいたい。

ラウルの頭からあの記憶が吹っ飛ぶまで冷凍庫で凍ってたい。

「休憩室なら空いてるよー」

と、ロアの声がレジから聞こえて来る。

「すいません、頭冷やさせてきますんで! ほら、来いっ!」

「いたっ、痛いってば!」

レオはあたしの腕を掴んで休憩室にほおりこんだ。