「……はい、非存在可の発作は、今はなんとか止まってるみたいです……いいえ、そんなことありませんよ。迷惑かけてくれないと、こっちも寂しいですから……」

ロアの苦笑のような声が聞こえてきた。

どうやら、電話をしているらしい。

「はい、それじゃあ、明日ちゃんと家まで送りますんで、失礼します」

 ロアはそう言って、電話の回線を切った。

あたしの意識は次第にはっきりとしてくる。ここはどこだろう……?

「リンちゃん、起きた?」

 低いところに寝かされているのか、あたしに気付いたロアは、しゃがみこんであたしの顔を覗き込んでいた。

周りを見る限り、ここは花屋の休憩室だろう。

そして、寝かされてるのはソファ。

「ごめんなさい、ロアさん……」

「なんで謝るの? リンちゃんは何も悪いことしてないんだから、謝る必要なんてないよ。気分は?」

「……いいです」

「そう、良かった。寒くない?」

 ロアは安堵したように息をつき、あたしの頭を撫でた。

「大丈夫です」

「お腹減ったでしょ。これ、近くのコンビニで買って来たんだけど食べる?」

「ありがとうございます」

テーブルに並べられた、おにぎりやお弁当を見てあたしは目を輝かせた。

ちょうどお腹が減ってたところだったのだ。

ロアが神様のように見える。

「代金は給料から引いと……」

「ロアさんっ!」

「冗談だよ」

あはは、と苦笑気味に笑うロア。

この人が言うと、冗談に聞こえないのだ。