父はあたしの恋人で、母はあたしの友達だった。

あたしが母を殺した。

父に20年間嘘をつかれていた。

真実を知りすぎて、あたしの頭の中はどうかなりそうだった。

今までこのことに気付かなかった自分が情けなくて、母の幸せを奪ったことが申し訳なくて、父に嘘をつかれていたことがショックで、涙がどうしても止まらない。

あたしは、存在したらいけなかったのかも知れない。

ふいにそう思った。

あたしがいなければ、父はあたしと付き合おうとも思わなかったし、嘘をつく必要もなかった。

母は少しでも長くこの世にいれた。

あたしがいたから……。

あたしは夜の道を独り、泣きながらあてもなく走った。