「あぁ、全然来ないからあたしも心配してたの。大丈夫かな? 今度心配だから家にでも……」
「引っ越したんだ」
レオはあたしの台詞を中断させるようにこう言った。
「……え?」
「あいつ、何も言わずに引っ越したんだ。俺とお前以外の人たちの記憶を消して」
「……ごめん、全然意味分からないんだけど」
「急に悪かったって言ってた。きっと本業の方に何かあったんだろうな。少しくらい俺らに相談してくれれば良かったのに」
レオは、まるであたしと目を合わせないようにしているみたいだった。
夜空を見上げ、淡々とした口調でこう告げる。
「ちょっと……待ってよ。どうしてそれをレオが知ってるの? それに、記憶を消す意味が分からない。なんでレオとあたしだけ……」
「俺はあいつの家に呼ばれたから行って、そのときに聞いた。記憶を消した意味は分からないけどな。あいつにも色々あったんだろ」
「何処?」
「あ?」
「何処に行ったのか、訊いてんの」
レオは無言で首を横に振る。
「それは俺も知らん」
あたしは下唇を噛む。
何も出来なかった自分が悔しい。
そこまで追い詰められてたなら、どうしてあたしに一言言ってくれなかったんだろう。