「どうか、あの馬鹿娘を助けてやってください」

レオは現在の状況が分からず、しばらく動けないでいた。

「や、止めてください、ロウンさん! 何してるんですかっ」

我に返ったレオは慌ててロウンを止めようとする。

「お願いします。俺には……もうあいつしか残ってない。あいつが、俺の全てなんだ。馬鹿みたいに明るくて、ドジなあの一人娘しか……残ってない。あいつがいない世界で生きていたって、なんの意味もないんだ」

「ロウンさんっ、顔を上げてください!」

「俺は……本当に最低な父親だ。いつでも寂しい思いをさせて、甘えさせてやることも出来なかった。嫌われても仕方ないとさえ思う。口を利いてくれていることさえ不思議なのに、あいつは笑いかけてくれさえする。あいつの笑顔を奪いたくなんかないが、存在を消えるのはもっと嫌だ。何度自分で本当のことを言おうとしたことか……。それなのに、あいつの泣いた顔を見ることを恐れて、何も言えないんだ。同時に、過去の自分を信じてみたいとも思う。自分では……どうにもできないんだ。俺は自分の娘一人救えない駄目な父親だ。だから、お願いします。あいつを……リリーンを……助けてやってくださいっ!」

涙を流しながら、娘のために土下座をしている一人の父親の姿を見てレオは戸惑っていた。

だが、どれだけロウンが自分の娘を想っているかということはよく分かった。

レオは意を決して頷く。

「……分かりました」

その言葉を聞いてロウンは顔を上げ、真っ直ぐ自分を見つめているレオを見つめる。

「リンは、俺が助けます」